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キャバクラの人材派遣・ヘルプ契約 — 労働者派遣法と職安法の境界線【2026年版】

執筆: ナイトビジネスラボ編集部|監修: 中井敦(株式会社アキグラ 代表取締役)

夜の店舗のカウンターのイメージ

「週末だけ人が足りない。知り合いの店からキャストを回してもらえないか」
「人材会社から来るヘルプ、契約書には『業務委託』と書いてあるけど本当に大丈夫?」
「うちの女の子が、よその店に『ヘルプ』で入ることになった。紹介料をもらっていいのか」
「個人事業主として契約してもらえば、面倒な話は全部なくなるんじゃないか」

どれも、ナイトワークの現場でよく聞く話です。そして多くの人が「契約書に業務委託と書いてあるから大丈夫」と思っています。

ところが、法律は契約書の題名を見ません。見るのは、現場で誰が雇い、誰が指示を出しているかです。 題名が業務委託でも、中身が違えば派遣や労働者供給として扱われます。

法律ではこう書いてある — 派遣法と職安法の条文

派遣は「労働者派遣法」、労働者供給は「職業安定法(職安法)」に書かれています。まず条文です。

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労働者派遣法 第2条第1号
労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

ポイントは2つです。働く人を自分で雇っていること、そして他人の指揮命令で働かせることです[1]。

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職業安定法 第44条
何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自己の指揮命令の下に労働させてはならない。

こちらは禁止の条文です。しかも「供給する側」だけでなく、受け入れて働かせる側(店)も対象です[2]。 なお労働者供給は、同法第4条で「他人の指揮命令を受けて労働に従事させること」とされ、労働者派遣に当たるものは含まれません。

条文は改正されることがあります。実際に契約を結ぶ前に、e-Gov法令検索で最新の文言を確認してください。

派遣・業務委託・労働者供給の違い

「うちは数店舗で人を貸し借りしているだけ」「小さい店だから関係ない」。そう思うかもしれません。 しかし、法律は店の大きさで線を引きません。分かれ目は「雇用している人は誰か」と「指示を出す人は誰か」の2点だけです。

形雇っている人指示を出す人許可
店が直接雇う(または直接契約)店店派遣・供給の許可は不要
派遣派遣会社受け入れた店派遣会社が国の許可を受ける
請負・業務委託委託を受けた側委託を受けた側が自分で不要(ただし実態が必要)
労働者供給供給元は雇っていない受け入れた店原則禁止

キャバクラで起きやすいのは、表の下2行の取り違えです。 席に付ける順番も、接客の仕方も、上がり時間も店が決めているのに、書類だけ「業務委託」。この形では請負とは認められにくくなります。 請負と派遣の区別には、厚生労働省の告示にもとづく基準があり、指示や管理を受託側が自ら行っているかが問われます。

個人事業主として店と直接契約する場合も同じです。実態として店の指示で働き、時間や場所に縛られているなら、労働基準法上の「労働者」と判断されることがあります[4]。

キャバクラが派遣キャストを使うのは違法?

許可を持つ派遣会社から正しい形で受け入れるなら、それだけで違法とは限りません。派遣法が禁じる業務は港湾運送・建設・警備などで、接客は一覧に入っていません[1]。

では、許可のない会社や個人から人を回してもらったらどうなるのでしょうか。 その場合は派遣として成り立たず、労働者供給に当たるおそれが出てきます[2]。 さらに、キャバクラは風営法の許可を受けた営業です。接客に就く人の年齢確認や名簿の扱いは、派遣であっても店の責任として残ります[3]。

つまり派遣法・職安法・風営法は別々の法律で、1つ通っても他が自動的に通るわけではありません。

判定チェックリスト 7つの質問

契約書を見る前に、現場の実態を次の7つで確認します。

  1. 出勤日と上がり時間を決めているのは誰か
  2. 席や担当するお客さんを指示しているのは誰か
  3. 接客の仕方・ルールを教え、直しているのは誰か
  4. 報酬を決めて払っているのは誰か(間に入る人は何を受け取っているか)
  5. 衣装・道具・送迎を用意しているのは誰か
  6. その人は、店の依頼を断る自由があるか
  7. 間に入る会社に、派遣の許可番号があるか

1〜3を店が握っているなら、店の指揮命令の下で働いていると見られます。この場合、請負・業務委託の説明は成り立ちにくくなります。 あとは、間に入る人が本人を雇っていて許可があれば派遣、雇っていなければ労働者供給、という分かれ方です。

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現場でつまずきやすいポイント
契約書は整えたのに、実際の運用が別物になっているケースです。 派遣会社と業務委託の契約書を交わしても、当日の指示を店長が直接出していれば、実態は変わりません。 許可番号は口頭で聞くだけで済ませず、書面で受け取り、厚生労働省の人材サービス総合サイトなどで実在を確認してください。 あわせて、派遣・ヘルプで入るキャストの年齢確認と従業者名簿への記載を、初回出勤の前に済ませる流れを決めておきます。 後回しにすると、名簿に載らないまま接客している日が生まれます。

違反したらどうなる? — 罰則

許可なく派遣事業を行った場合も、労働者供給事業の禁止に違反した場合も、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています[1][2]。 2025年6月1日施行の改正で、従来の懲役・禁錮は拘禁刑に一本化されました。

職安法44条は、受け入れた側も禁止の対象です。 「人を回してくれた側が悪い」では済まない、という点が要です。

派遣キャストの稼働実績を売上データと紐づける

区分を整えたら、次は記録です。誰が、どの形で、いつ入り、どのお客さんにつき、いくら売り上げたか。ここまで残せば、運用が実態どおりかを後から説明できます。

1

キャストごとに契約の区分を登録する

直接雇用・派遣・業務委託の別と、派遣なら派遣会社名と許可番号、契約期間を残します。区分が空欄のキャストを作らないことが出発点です。

2

出勤の実績を日ごとに記録する

出勤日、入店・上がりの時刻、どの店舗かを残します。派遣は期間が決まっているので、契約期間外の出勤が混ざっていないかも見えます。

3

接客したお客さんと売上に紐づける

指名・同伴・ボトルなどの売上を、キャスト単位で顧客データに結びつけます。 派遣キャストの貢献が見えるので、次回の依頼や契約更新の判断材料になります。

ここで気をつけたいのは、顧客情報の見せ方です。派遣・ヘルプのキャストには、接客に必要な範囲だけを見せ、契約が終わったらアクセスを止めます。 記録は事実を残すためのものです。数字の目標を押しつけて指揮命令を強める道具にしないことも、区分を守る運用の一部です。

冒頭の「契約書に業務委託と書いてあるから大丈夫」に戻れば、答えは明快です。 書類ではなく、現場で誰が指示を出しているかを記録で説明できることが、店を守ります。

よくある質問

Q1. 他店のキャストを一晩だけ借りるのも問題になりますか?

一晩でも、他店で雇われている人を自店の指示で働かせれば、派遣や労働者供給の形になります。 反復して行えば「事業」と見られやすくなります。1回限りの厚意か、継続的な貸し借りかで判断が分かれる場面もあるため、迷ったら都道府県労働局に相談してください。

Q2. 個人事業主として契約すれば、派遣の問題はなくなりますか?

なくなりません。契約の名前ではなく、実態で判断されます。店の指示で時間と場所に縛られて働くなら、労働者として扱われることがあります[4]。

Q3. 派遣会社の許可は、どう確認すればいいですか?

許可番号を書面で受け取り、厚生労働省の人材サービス総合サイトなどの公的な検索で、会社名と番号が一致するかを確かめます。許可の確認ができない会社とは契約しないのが安全です。

Q4. キャストを紹介してくれた人に紹介料を払ってもよいですか?

お金をもらって仕事を世話すると、有料職業紹介に当たる可能性があり、その事業には許可が必要です[2]。 「バック」「協力金」といった名目でも、中身で判断されます。支払う前に、相手が許可を持つ事業者かを確認してください。

Q5. ヘルプで入ったキャストにも、風営法のルールは及びますか?

営業所で接客に就く以上、年齢確認など店側の義務は変わりません[3]。 派遣か直接雇用かにかかわらず、初回出勤の前に確認する流れを決めておくと、抜けが出ません。

この記事の執筆・監修

ナイトビジネスラボ編集部(監修: 中井敦 — 株式会社アキグラ 代表取締役)

東京・秋葉原でコンセプトカフェ・バー4店舗を現役で運営する株式会社アキグラの編集チームが執筆し、 代表取締役の中井敦が店舗経営の実務経験と法令の一次情報に基づいて監修しています。運営者情報を見る

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