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ナイトビジネスの採用面接ガイド — 違法質問・個人情報保護・ハラスメント防止チェックリスト

執筆: ナイトビジネスラボ編集部|監修: 中井敦(株式会社アキグラ 代表取締役)

面接を行うオフィスの机とノート

「面接で『彼氏いるの?』って聞いちゃったけど、まずかっただろうか」
「履歴書のフォーマットに本籍地の欄があるけど、ずっとそのまま使っている」
「家族構成を聞くのは、応募者を知るために当然のことだと思っていた」
「不採用にした子の履歴書、そのまま引き出しにしまってあるけど大丈夫だろうか」
「容姿や体型を面接で確認したいけど、これはセクハラになるのか判断がつかない」

「うちは小さい店だから、そこまで厳密にやらなくても大丈夫」と思っていないだろうか。 実際には、従業員数や法人・個人の別にかかわらず、採用面接には職業安定法・個人情報保護法・男女雇用機会均等法・労働施策総合推進法という4つの法律が同時にかかってくる。 しかも「昔からこの質問シートを使っている」という店ほど、気づかないうちに違法な質問を重ねていることが多い。

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この記事はこんな人向け
・キャバクラ・ホストクラブ・バーでキャストやスタッフの採用面接を担当している
・採用担当を外部や求人媒体に任せきりで、質問内容を確認したことがない
・面接シートに本籍地・家族構成の欄が残っている
・不採用者の履歴書の保管・廃棄ルールを決めていない
・ハラスメントで採用面接がトラブルにならないか不安がある

採用面接にも法律の壁がある

「採用は店の自由だ」というのは半分正しく、半分間違っている。 誰を採るか自体は事業主の裁量が広く認められてきたが、面接で何を聞くかには別の制約がかかる。 職業安定法は、求人・募集の場面で求職者の個人情報をどう扱うべきかを次のように定めている。

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職業安定法 第5条の5第1項(求職者等の個人情報の取扱い・要旨)
労働者の募集を行う者等は、その業務に関し求職者等の個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、 その業務の目的の達成に必要な範囲内で収集し、当該目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。

「必要な範囲内で」という一文が重要だ[1]。 採用担当の裁量で自由に何でも聞けるわけではなく、その質問が採否の判断に本当に必要かが常に問われる。 この考え方をもとに、厚生労働省は「公正な採用選考」の基本方針として、選考は応募者の適性・能力のみを基準に行うべきだと示している[2]

聞いてはいけない質問リスト

厚生労働省が示す「就職差別につながるおそれがある事項」をもとに、面接で避けるべき質問を整理した[2]

質問の例何が問題か根拠
本籍・出生地はどこですか生まれ育った環境で採否を判断することになる職業安定法に基づく指針
ご両親の職業・収入・資産は本人の能力と無関係な事項で選別する職業安定法に基づく指針
支持政党・宗教・尊敬する人物は思想・信条を推測させる質問になる職業安定法に基づく指針
持ち家ですか、家庭環境は生活環境で採否を判断することになる職業安定法に基づく指針
結婚の予定・お子さんの有無は特に女性に対して不利益な取扱いにつながる男女雇用機会均等法

表の右側の項目には、いずれも共通点がある。本人の仕事ぶりとは関係のない属性で、採否や配置が左右されかねないという点だ。

本籍や家族構成を聞くとなぜNGなのか

本籍地や家族の職業・収入を尋ねる質問がNGとされるのは、本人の適性や能力と無関係な事情で、採否の入り口から人を選別してしまうからだ。 厚生労働省は「公正な採用選考の基本」として、採用選考は応募者の適性・能力のみを基準に行うべきだと明示している[2]

ここで一つ疑問が浮かぶ。「採用の自由自体は広く認められているはずでは」という点だ。 たしかに、事業主が誰を雇うかについて広い裁量を持つという考え方は判例上も存在する。 しかしその裁量は無制限ではなく、その後にできた職業安定法の指針や男女雇用機会均等法によって、面接で何を尋ねてよいかの部分は個別に絞り込まれてきた。 「採用は自由だから何を聞いてもいい」という発想は、この絞り込みを見落としている。

履歴書・面接で集めた個人情報の扱い

履歴書やエントリーシートも、個人情報保護法上の「個人情報」にあたる。 まず、何のために情報を集めるのかを決めておく必要がある。

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個人情報の保護に関する法律 第17条第1項(利用目的の特定)
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(利用目的)をできる限り特定しなければならない。

病歴や健康診断の結果、犯罪歴などは「要配慮個人情報」と呼ばれ、より厳しい扱いが求められる[3]

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個人情報の保護に関する法律 第20条第2項(要配慮個人情報の取得制限・要旨)
個人情報取扱事業者は、一定の場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。

面接で持病の有無を深く掘り下げて聞いたり、健康診断結果の提出を必要な範囲を超えて求めたりする行為は、この規定に触れる可能性がある。 取得した個人情報データベースを、正当な理由なく第三者へ流用した場合には刑事罰の対象にもなる。 2025年6月1日施行の改正で、従来の懲役・禁錮は拘禁刑に一本化されており、現行法上の罰則は1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金[3]

不採用者の履歴書についても、集めた時点の利用目的(採用選考)が終われば、いつまでも保管し続ける理由がなくなる。 個人情報保護委員会は、利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人データを保有し続けないことを、事業者が取り組むべき事項として示している[4]

面接中のハラスメントをどう防ぐか

面接は、応募者と店側の力関係が最も偏る場面の一つだ。 だからこそ、性別を理由に扱いを変えることは明確に禁じられている。

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男女雇用機会均等法 第5条(性別を理由とする差別の禁止)
事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

「うちは女性キャストの店だから、性別で判断するのは仕方ない」という発想が出やすいが、これは職種に必要な資格・条件(性別を理由とすること自体がやむを得ない限られた例外)と、単なる思い込みによる区別を混同している。 採否そのものではなく、面接での質問の仕方や態度が問題になるケースも多い[5]

職場のハラスメント防止についても、事業主には体制整備の義務がある。

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労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第30条の2第1項(要旨)
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、 労働者の就業環境が害されることのないよう、雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

この義務が直接及ぶのは雇用契約後の労働者だが、面接の場にも同じ力関係の偏りがある。 面接を含む採用プロセス全体でハラスメントが起きないよう、相談体制を整えることが求められている[6]

ナイトビジネスならではの注意点

キャストの採用では、容姿や年齢の確認が職務上どうしても必要になる場面がある。 年齢確認そのものは、年少者の就労制限などの観点から必要な手続きであり、問題にはならない。 問題になるのは、職務上の必要性を超えて身体的特徴や交際relationshipを掘り下げる質問だ。

たとえば「体型を教えてください」という確認と、「彼氏はいますか」「結婚の予定は」という質問は、 性質がまったく違う。 前者が衣装や接客スタイルの検討に必要な範囲にとどまるのに対し、後者は本人の私生活に踏み込む質問であり、 女性に対してのみ聞いているのであれば男女雇用機会均等法上の問題にもなりうる[5]

労働基準法にも、労働条件に関する差別的取扱いを禁じる古くからの原則がある。

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労働基準法 第3条(均等待遇)
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

採用面接そのものへの適用は限定的だが、採用後の労働条件を思想・信条や出身で変えることは明確に許されない[7]。 面接で聞いた家族構成や出身地の情報が、無意識のうちに配置やシフトの判断材料になっていないか、一度振り返る価値がある。

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現場でつまずきやすいポイント
採用代行会社や求人媒体から提供されたテンプレートの面接シートを、そのまま使い続けている店舗は少なくない。 自店で作った質問項目は見直しても、外部から渡されたフォーマットの本籍地欄や家族構成欄は「もともと入っていたもの」として放置されがちだ。 採用フローの一部を外部に委託している場合こそ、面接シートの質問項目を定期的に自店で確認する必要がある。

面接前チェックリスト

1

面接シートの質問項目を洗い出す

今使っている面接シート・エントリーシートに書かれている質問を、一問ずつ書き出す。 外部から渡されたテンプレートも例外にしない。

2

本籍・家族・思想信条に関する項目を削除する

本籍地、家族の職業・収入、支持政党、宗教、結婚・出産予定など、職務の適性・能力と関係のない項目を面接シートから外す。

3

個人情報の利用目的を明記し本人に伝える

履歴書や面接で集めた情報を何に使うのか(採用選考のみか、採用後の人事管理にも使うか)を、面接前に応募者へ伝える。

4

面接担当者にも相談窓口を周知する

面接を担当するスタッフ自身が、ハラスメントの相談窓口や対応手順を把握しているか確認する。

5

不採用者の個人情報の保管期限を決める

採用選考という利用目的が終わった履歴書をいつまで保管し、いつ・どのように廃棄するかをあらかじめ決めておく。

よくある質問

面接で「彼氏・彼女はいますか」と聞くのはNGですか

職務の適性・能力の判断に必要な質問とは言えないため、避けるべき質問にあたる。 特に女性応募者にのみ尋ねている場合は、男女雇用機会均等法上の問題にもつながりやすい。

履歴書に「本籍地」欄があるフォーマットを使い続けても大丈夫ですか

欄があること自体よりも、その欄に記入させて採否の判断材料にすることが問題になる。 厚生労働省が示す「就職差別につながるおそれがある事項」に該当するため、面接シートから外すのが望ましい。

不採用者の履歴書はいつまで保管していいですか

法律が一律の保管期間を定めているわけではないが、個人情報保護法は利用目的の達成に必要な範囲を超えて保有し続けないことを求めている。 採用選考という目的が終わった時点で、保管期限を決めて廃棄するのが原則になる。

容姿や体型について聞くのは全てNGですか

全て禁止というわけではない。 衣装・接客スタイルの検討など職務上の必要性がある範囲での確認は問題になりにくいが、必要性を超えて身体的特徴を掘り下げる質問はハラスメントにつながりやすい。

面接をスタッフ1人で行っても法律上問題ありませんか

面接担当の人数自体を法律が定めているわけではない。 ただし、担当者が1人だけだと質問内容やハラスメントのチェックが働きにくくなるため、面接シートの見直しと相談窓口の周知を、担当者の人数にかかわらず整えておく必要がある。

この記事の執筆・監修

ナイトビジネスラボ編集部(監修: 中井敦 — 株式会社アキグラ 代表取締役)

東京・秋葉原でコンセプトカフェ・バー4店舗を現役で運営する株式会社アキグラの編集チームが執筆し、 代表取締役の中井敦が店舗経営の実務経験と法令の一次情報に基づいて監修しています。運営者情報を見る

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