「お店でBGMを流してるけど、これって著作権料を払わないとダメなの?」
「JASRACってよく聞くけど、うちのバーも契約しないといけないの?」
「カラオケを導入したいけど、著作権料の支払いはどうなるんだろう?」
「YouTubeやSpotifyをBGMに使うのは、やっぱりマズいのかな…」
バーやキャバクラ、スナックといったナイトビジネスを経営していると、お店の雰囲気作りに欠かせないのがBGMやカラオケです。 しかし、これらの音楽を無断で利用すると、著作権侵害にあたる可能性があります。 「知らなかった」では済まされないのが著作権のルール。最悪の場合、高額な損害賠償や刑事罰の対象になることもあります。
この記事では、ナイトビジネスのオーナー様が安心して音楽を利用できるよう、JASRACやNexToneといった著作権管理団体との契約方法、料金体系、そしてカラオケ利用時の注意点まで、 法律の素人でもわかるように具体的に解説します。 無用なトラブルを避け、お客様に最高の「音」の体験を提供するための知識を身につけましょう。
・バー、キャバクラ、スナック、ホストクラブでBGMやカラオケを利用している、または利用を検討しているオーナー様
・JASRACやNexToneとの契約が必要か、どうすればいいか知りたい方
・著作権侵害のリスクを正しく理解し、対策したい方
・スタッフに音楽利用のルールを説明したい方
飲食店でBGMを流すのは違法?
結論から言うと、原則として著作権者の許可なくBGMを流すのは違法です。 お店で音楽を流す行為は、著作権法で定められた「演奏権」にあたるため、著作権者の許可が必要になります。
著作権法では、音楽の著作権者が持つ権利の一つに「演奏権」があります。これは、音楽を公衆に聞かせる権利のことです[1]。 お店でお客様にBGMを聞かせる行為は、この「公衆への演奏」にあたるため、著作権者に無断でBGMを流すことは著作権侵害となります。
著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
ただし、著作権者一人ひとりに許可を取るのは現実的ではありません。そこで登場するのが、JASRAC(日本音楽著作権協会)やNexTone(ネクストーン)といった著作権管理団体です。 これらの団体は、多くの著作権者から権利を預かり、お店の代わりに利用許諾と使用料の徴収を行っています。
JASRACとNexTone、どっちと契約すればいいの?
JASRACとNexToneは、管理している楽曲が別々です。JASRACが管理する楽曲を流すならJASRACの手続き、NexToneが管理する楽曲を流すならNexToneの手続きが、それぞれ必要です[2][3]。 「どちらか一方と契約すれば、もう一方の管理楽曲も使える」わけではありません。
ただし、お店のBGMとして流される楽曲は、JASRACの管理楽曲が大部分を占めます。 JASRACは、BGM使用料に「利用割合」(JASRAC管理楽曲の利用回数 ÷ JASRACと他の管理事業者の管理楽曲の利用回数の合計)を反映しており、2026年度に適用する値は99.55%と発表しています[8]。 そのため、多くのお店ではまずJASRACの手続きが必要かどうかを確認することになります。 NexTone管理楽曲を店舗で流す場合の手続き・料金は、NexToneに確認してください(NexToneの公式ページで、店舗BGM向けの案内は確認できていません)[3]。
なお、著作権が消滅した楽曲だけを流す場合や、JASRACが演奏利用を管理していない楽曲だけを流す場合は、JASRACへの手続きは不要です(後者はその楽曲の著作権者に手続きを確認します)[5]。
流したい楽曲がどちらの団体の管理かは、各団体の作品データベースで確認できます。 特定のアーティストの曲を多く流す場合は、先に管理団体を調べておきましょう。
JASRACとの契約方法と料金は?
JASRACの使用料は、店舗面積(宿泊施設は宿泊定員)と、利用の期間・回数などに応じて決まります。具体的な契約ステップと料金体系の目安を見ていきましょう。
契約ステップ
利用許諾契約の申し込み
JASRACのウェブサイトからオンラインで申し込むか、申請書をダウンロードして郵送で申し込みます。 店舗情報(名称、住所、業種、広さなど)を正確に記入しましょう[2]。
利用許諾契約の締結
JASRACの案内に沿って契約内容を確認し、手続きを進めます。 契約店には、契約店であることを示すステッカーが交付されます[5]。
使用料の支払い
契約内容に基づいて使用料を支払います。 支払い方法や時期は、契約時のJASRACの案内で確認してください。
NexToneも同様に、ウェブサイトからの申し込みや問い合わせで契約を進めることができます[3]。
料金体系の目安(JASRACの場合)
JASRACのBGM使用料は、「店舗面積」(店舗等の面積)に応じた区分で決まります。客席の床面積ではありません[5]。 CDなどの録音物や有線放送等でJASRAC管理楽曲をBGMとして流す場合の、一般の店舗(バー・スナック・キャバクラなど)の使用料は次のとおりです。金額はすべて税抜で、別途消費税相当額が加算されます。
| 店舗面積 | 年額使用料 | 1か月の使用料 | 1曲1回の使用料(5分まで) |
|---|---|---|---|
| 500㎡まで | 6,000円 | 1,200円 | 2円 |
| 1,000㎡まで | 10,000円 | 2,000円 | 3円 |
| 3,000㎡まで | 20,000円 | 4,000円 | 7円 |
3,000㎡を超える区分は年額30,000円〜50,000円です(宿泊施設は宿泊定員で決まります)[5]。 バー・スナック・キャバクラの多くは500㎡までの区分に入ると考えられます。 また、2026年度(2026年4月〜2027年3月)は前述の利用割合99.55%が反映されるため、年額6,000円(税抜)の場合、請求額は税込6,570円と、JASRACは例を示しています[8]。 使用料は年度ごとに見直されるため、契約前にJASRACの最新の案内で確認してください。
有線音楽放送など、JASRACと利用許諾契約を結んでいる音源提供事業者から音源の提供を受けている場合は、事業者がお店に代わってBGMの著作権使用料を支払っているため、お店が個別に手続きする必要はありません(契約している事業者はJASRACの一覧で確認できます)[5]。 ピアノやギターなどの生演奏をBGMとして流す場合は、手続きが異なります[5]。
JASRACは、契約済みの音源提供事業者から有線音楽放送などで音源の提供を受けている場合、有線放送とCDの両方をBGMとして流しても、お店が個別に手続きする必要はないと案内しています[5]。 ただし、市販のCDやインターネット配信の音源を、CD-Rや携帯音楽プレイヤーなど別の媒体にコピーして流す場合は、複製の手続きが別に必要です。 また、JASRAC以外が管理する楽曲(NexTone管理楽曲など)は、その団体への確認が必要です。
NexToneの管理楽曲を流す場合の料金は、NexToneのウェブサイトまたは窓口で確認してください[6]。 いずれにしても、お店の規模や利用状況に合わせて、最適な契約を選ぶことが大切です。
カラオケを導入する場合の著作権料は?
お店にカラオケを導入する場合、BGMとは別の利用として手続きが必要です。JASRACは「通信カラオケ事業者による楽曲データの送信・複製」と「店舗での歌唱」を別の利用として扱い、それぞれに利用許諾の手続きを求めています。
JASRACの説明では、通信カラオケ事業者(DAM、JOYSOUNDなどのメーカー)は、店舗の受信装置へ楽曲データを送信・複製するまでの利用について許諾手続きを行います。一方、店内での歌唱部分については、店舗経営者がJASRAC管理楽曲の利用許諾手続きを行うとされています[7]。 つまり、機器メーカーとの契約や月額利用料だけで、店舗側の手続きがすべて済むとは限りません。 なお、カラオケや生演奏などの利用で既にJASRACと契約している場合は、BGMの手続きは不要です。ただし、BGMの契約ではBGM以外の使い方(カラオケなど)はできません[5]。
店舗側の使用料は、カラオケスナックなどでは客席面積などに応じた規定(または1曲1回ごとの規定)によって決まります。契約済みかどうか、手続きの要否、金額は、機器メーカーの営業担当やJASRAC(NexToneの管理楽曲はNexTone)に確認してください。
・お客様が持ち込んだCDやUSBメモリの音源をカラオケ機器で流す場合
・自分で選曲した音楽をBGMとして流す機能があるカラオケ機器で、BGMとして利用する場合
これらは通信カラオケとは別の使い方です。BGMの手続きが必要かどうかは、既に結んでいる契約(カラオケ・生演奏など)の内容によります。迷う場合はJASRACやNexToneに確認してください。
著作権料を払わないとどうなる?
著作権料を支払わずにBGMやカラオケを無断で利用した場合、著作権侵害となり、民事上の損害賠償請求や、最悪の場合、刑事罰の対象になる可能性があります。
民事上の責任
著作権を侵害した場合、著作権者(または著作権管理団体)から以下のような請求を受ける可能性があります。
- 差止請求: 音楽の利用を停止するよう求められます(著作権法第112条)[4]。
- 損害賠償請求: 著作権侵害によって生じた損害(本来支払うべき使用料など)の賠償を求められます。 損害賠償は、故意又は過失による侵害が前提です(第114条)。金額は事案ごとに異なります。
刑事上の責任
悪質な著作権侵害の場合、刑事罰の対象となることもあります。 著作権法では、著作権侵害に対して「10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方」という重い罰則が定められています[4]。 法人の場合は、さらに高額な罰金(3億円以下)が科せられる可能性もあります(第124条)。 なお、この罪は原則として権利者の告訴がなければ起訴できません(第123条)が、民事上の請求は別に受けるおそれがあります。
差止めの請求は、侵害する者に対してでき、故意・過失は条文の要件になっていません(第112条)。 損害賠償は故意又は過失による侵害が前提です(第114条)。 著作権者や管理団体から、使用料の請求や手続きの案内を受ける可能性があります。 リスクを避けるためにも、必ず適切な手続きを行いましょう。
著作権料が不要なケースはある?
お店で音楽を流す場合でも、著作権保護期間が切れた楽曲や、著作権フリーの音源、または私的利用の場合など、著作権料が不要なケースも存在します。
著作権保護期間が終了した楽曲
著作権には保護期間があり、日本では原則として著作者の死後70年で消滅します[1]。 保護期間が終了した楽曲は「パブリックドメイン」となり、誰でも自由に利用できます。 クラシック音楽の多くはこれに該当しますが、演奏者や編曲者には別途著作隣接権が発生する場合があるため、注意が必要です。
著作権フリー(ロイヤリティフリー)の音源
「著作権フリー」や「ロイヤリティフリー」と明記されたBGM素材は、購入またはダウンロードすることで、追加の著作権料なしで利用できる場合があります。 ただし、利用規約をよく確認し、商用利用が可能か、クレジット表記が必要かなどを確認しましょう。
私的利用の場合
家庭内で個人的に音楽を楽しむ場合は、著作権料は発生しません。 しかし、店舗でのBGM利用は「公衆への演奏」にあたるため、私的利用とはみなされません。たとえお客様が一人しかいなくても、営業目的で音楽を流す以上、原則として著作権処理が必要です。
これらのサービスは、あくまで個人が楽しむための契約がほとんどです。 規約で「商用利用禁止」と明記されていることが多く、お店のBGMに使えば規約違反になります。 JASRACなどとの契約とは別に、配信サービスの規約や、レコード会社などの権利(著作隣接権)にも注意が必要です[5]。 たとえ有料プランであっても、商用利用が許可されているわけではないので注意が必要です。
契約後の注意点とトラブル回避策
JASRACやNexToneと契約した後も、いくつか注意しておくべき点があります。 これらを理解して、安心して音楽を利用できる環境を整えましょう。
BGMとイベント利用の区別
BGM利用の契約は、あくまで店舗内で常時流す背景音楽を対象としています。 もし、お店でDJイベントを開催したり、生演奏のライブを行ったりする場合は、BGM利用とは異なる契約や申請が必要になることがあります。 特に、DJイベントでは、DJが選曲する楽曲一つ一つに著作権が発生するため、イベント主催者や店舗が別途JASRAC等に申請し、使用料を支払う必要があります。 イベントを企画する際は、事前に著作権管理団体に相談しましょう。
スタッフへの周知徹底
お店のスタッフが、著作権に関する知識を共有していることも重要です。 「お客様が持ってきたCDを勝手に流してしまった」「YouTubeのプレイリストをBGMにしてしまった」といった、 スタッフの不注意による著作権侵害を防ぐためにも、店内の音楽利用ルールを明確にし、定期的に教育を行いましょう。「お店で流していいのは、契約済みの有線放送か、著作権処理済みのBGM音源のみ」といった具体的な指示が有効です。
契約内容の定期的な確認
お店の規模が変わったり、新しい音楽利用方法を導入したりする際は、現在の契約内容で問題ないか、定期的に確認しましょう。 特に、店舗の増床や、カラオケ機器の入れ替えなどは、契約内容の見直しが必要になる場合があります。 不明な点があれば、JASRACやNexToneに問い合わせて確認することが最も確実です。
よくある質問
Q1: YouTubeやSpotifyをBGMとして流してもいいですか?
A1: いいえ、原則としてできません。これらのサービスは個人利用を前提とした契約であり、お店などの営利目的での利用は規約で禁止されていることがほとんどです。お店のBGMに使うと規約違反になるほか、権利者の許諾が別に必要になる場合があります。
Q2: 有線放送(USENなど)を契約していれば大丈夫ですか?
A2: はい、有線放送事業者が著作権管理団体と契約しているため、有線放送を通じて流れる音楽については、お店が別途JASRAC等と契約する必要はありません。有線放送とCDの両方を流す場合も、JASRACは個別の手続きは不要と案内しています。ただし、CDなどを別の媒体にコピーして流す場合は複製の手続きが、JASRAC以外の管理楽曲は各団体への確認が必要です。
Q3: DJイベントをする場合もJASRACに申請が必要ですか?
A3: はい、必要です。BGM利用とは異なり、DJイベントは個別の楽曲利用が発生するため、イベント主催者や店舗が別途JASRAC等に申請し、使用料を支払う必要があります。事前に著作権管理団体に相談しましょう。
Q4: 著作権フリーのBGMってどうやって探せばいいですか?
A4: 「ロイヤリティフリーBGM」などのキーワードで検索すると、多くの素材サイトが見つかります。利用規約をよく読み、商用利用が可能か、クレジット表記が必要かなどを確認して利用しましょう。有料のサブスクリプションサービスもあります。
Q5: 契約を怠っていたら、どうすればいいですか?
A5: 速やかにJASRACまたはNexToneに連絡し、利用許諾契約の申し込みを行いましょう。過去の利用分についても遡って使用料の支払いを求められる可能性があります。過去分の扱いは管理団体が個別に判断しますので、まず窓口に相談してください。
参考・出典
- [1]文化庁 著作権Q&A(旧:著作権なるほど質問箱)(参照: 2026-09-10)
- [2]JASRAC 音楽をご利用になる方へ(参照: 2026-06-03)
- [3]著作権管理サービス|株式会社NexTone(参照: 2026-10-21)
- [4]e-Gov法令検索 著作権法(第22条・第112条・第114条・第119条・第123条・第124条)(参照: 2026-10-21)
- [5]JASRAC 各種施設でのBGM(使用料・手続き)(参照: 2026-10-21)
- [6]NexTone:音楽利用者の皆さま(ご利用ガイド)(参照: 2026-09-10)
- [7]業務用通信カラオケと店舗でのカラオケ歌唱 | JASRAC(参照: 2026-09-10)
- [8]2026年4月以降のBGM包括使用料の利用割合について | JASRAC(2026年3月19日)(参照: 2026-10-21)