「うちのホステスは業務委託だから、源泉徴収は関係ないと思ってた…」
「キャストの給料から税金を引くのって、どう計算すればいいの?」
「税務署から『源泉徴収漏れがある』って指摘されて、どうしよう…」
「日払いのキャストにも源泉徴収って必要なの?やり方がわからない」
ナイトビジネスを経営するあなたにとって、キャストへの報酬支払いは日々の業務の中心です。しかし、この報酬から「源泉徴収(げんせんちょうしゅう)」という税金を正しく引けていますか? 「うちは業務委託だから大丈夫」と安易に考えていると、源泉徴収が漏れていた分を、税務調査で過去にさかのぼって求められることがあり、加算税や延滞税も加わります。
この記事では、ホステスやキャストへの報酬から引くべき所得税(源泉徴収税額)の計算方法や、納付のルールについて、法律の専門知識がない方でもわかるように、かみ砕いて解説します。 正しい知識を身につけて、安心して店舗運営を行いましょう。
・キャバクラ、ホストクラブ、バー、スナックなどを経営している
・業務委託契約のホステスやキャストへの報酬支払いに不安がある
・源泉徴収の計算方法や納付方法がわからない
・税務調査で追徴課税を受けたくない
・税金に関する知識を整理したい
「源泉徴収」ってそもそも何? — なぜ報酬から税金が引かれるの?
源泉徴収とは、報酬や給料を支払う側が、受け取る人の所得税をあらかじめ天引き(差し引いて)して、国に納める仕組みのことです。これは、税金を取りっぱぐれないようにするための国の制度で、所得税法という法律で定められています。
会社員の場合、毎月の給料から所得税が天引きされていますが、これが源泉徴収です。 ナイトビジネスのキャストのように、お店と「業務委託契約」を結んでいる人(個人事業主)の場合も、特定の種類の報酬については源泉徴収が必要になります[1]。なお、雇用契約で給与として支払う場合は、給与の源泉徴収(年末調整を含む)になります。以下で説明する計算は、報酬として支払う場合のものです。
つまり、お店を経営するあなたは、キャストに報酬を支払う際に、その報酬から所得税を差し引いて、キャストの代わりに税務署に納める義務がある、ということです。
ホステス・キャストは「源泉徴収」の対象になるの?
はい、業務委託契約のホステス・キャストへの報酬は、原則として源泉徴収の対象になります。国税庁のウェブサイトでは、源泉徴収が必要な報酬・料金の一つとして「バー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金」を明確に挙げています[1]。
「うちは業務委託だから給料じゃないし、源泉徴収は不要」と考えている経営者の方もいますが、これは誤解です。 業務委託契約であっても、特定の業務に対する報酬は源泉徴収の対象となるのです。 ホステスやキャストの報酬は、この「特定の業務」に該当します。
たとえキャストが「個人事業主として自分で確定申告するから、源泉徴収しないでほしい」と言ったとしても、お店側には源泉徴収を行う義務があります。 この義務を怠ると、後で税務署から指摘を受け、追徴課税などのペナルティが課されることになります。
報酬からいくら引けばいい? — 源泉徴収税額の計算方法
ホステス・キャストへの報酬から源泉徴収する所得税額は、報酬額から「5,000円 × 計算期間の日数」を差し引いた金額に10.21%を掛けた金額です。控除額は月いくらの固定額ではなく、報酬の計算期間の日数に比例して変わります[2]。
(報酬額 − 5,000円 × 計算期間の日数) × 10.21%
ここでいう「計算期間の日数」は、営業日数でも出勤日数でもなく、その報酬の計算の基礎となった期間の初日から末日までの全日数です[2]。同じ月にその人へ給与等も支払っている場合は、「5,000円 × 計算期間の日数」からその計算期間の給与等の支給額を差し引いた額が控除額になります。 たとえば「1日〜31日締めの月払い」なら31日、「16日〜月末締め」ならその期間の全日数を使います。
ここでいう「10.21%」は、所得税10%と、東日本大震災の復興財源に充てるための「復興特別所得税0.21%」を合計した税率です[2]。 この税率は令和8年中の支払いについてのものです。令和9年分以後は防衛特別所得税が加わるため、国税庁の最新の案内(No.2807)で確認してください[2]。
所得税率
10%
復興特別所得税率
0.21%
(所得税額の2.1%)
具体的な計算例
実際に例を挙げて計算してみましょう。
控除額 = 5,000円 × 31日 = 155,000円
(300,000円 − 155,000円) × 10.21% = 145,000円 × 0.1021 = 14,804円(1円未満切り捨て)
この場合、キャストに支払う金額は 300,000円 − 14,804円 = 285,196円 となります。
控除額 = 5,000円 × 30日 = 150,000円
(100,000円 − 150,000円) → 報酬額が控除額を下回るため、源泉徴収税額は0円です。
この場合、キャストには100,000円をそのまま支払います。
金額と日数を入れると、同じ計算をその場で確かめられます。
源泉徴収税額の計算
令和8年中に支払う、ホステス・キャストへの報酬(国税庁 No.2807 の計算方法)
1回に支払う金額(衣装代・送りのタクシー代を含む)
初日から末日までの全日数(出勤日数ではない)。日払いは1
同じ月に給与も払っている場合だけ
- 控除額
- 155,000円
- 税率を掛ける金額
- 145,000円
- 源泉徴収税額
- 14,804円
- キャストに支払う金額
- 285,196円
計算式: (報酬額 − 控除額)× 10.21%、1円未満切り捨て。控除額は 5,000円 × 計算期間の日数(同じ期間の給与等があればその額を差し引く)。金額による税率の区切りはありません。 令和9年分以後は防衛特別所得税が加わるため、国税庁の最新の案内を確認してください。実際の取扱いは税務署か税理士にご確認ください。この計算だけのページ
・日払い・週払いの場合: 1回に支払う金額ごとに上記の計算を行います(施行令第322条)。このとき控除額は「5,000円 × その支払いの計算期間の日数」なので、その日の分だけを計算して支払う日払いなら控除額は5,000円、週払い(7日分)なら35,000円です。月払いの月額控除をそのまま日払いに当てはめると源泉徴収額を大きく取り違えるので注意してください。日払いの実際の取扱いは、税務署か税理士にご確認ください。
・衣装代・交通費の扱い: 国税庁(No.2807)は、報奨金や衣装代、深夜帰宅するためのタクシー代を、源泉徴収の対象となる報酬・料金に含まれるものとして挙げています。「実費として分けて渡したから対象外」とは言えません。ただし、お店が衣装代を負担する場合でも、その事業所でしか使えないデザイン・色調のもの、またはその事業所に常備してその事業所だけで使うものは、強いて課税しなくてよいとされています(国税庁の質疑応答事例)。ホステス本人の名義で買った一般的な衣装の代金を店が負担する場合は、源泉徴収が必要です。交通費全般の扱いは、支払方法によって異なる場合があるため、税務署や税理士にご確認ください。
源泉徴収を「忘れてしまったら」どうなるの?
源泉徴収を怠ると、経営者であるあなたが税務署から追徴課税を受け、延滞税や不納付加算税などのペナルティが課されます。源泉徴収は、報酬を支払う側の義務だからです。
税務調査で源泉徴収漏れが発覚した場合、過去にさかのぼって源泉徴収すべきだった税額を一括で納めるよう求められます。 さらに、以下のペナルティが加算されます。
- 不納付加算税: 源泉徴収すべき税金が法定納期限までに完納されなかった場合に課される税金です。原則として、納付すべき税額の10%が加算されます。調査を受ける前に自主的に納付した場合は5%になり、一定の要件を満たして法定納期限から1か月以内に納付した場合は課されません(国税通則法第67条)。
- 延滞税: 納付期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて課される、利息にあたる税金です[3]。
数年分をまとめて指摘されると、本来の税額に加算税と延滞税が加わり、負担が大きくなります。例えば月30万円(31日分)を支払う場合、1か月あたりの源泉徴収額は14,804円(例1)で、3年分(36か月)では約53万円の源泉徴収漏れになり、ここに加算税などが加わります(例1の計算結果に基づく試算です)。
源泉徴収が正しく行われていないと、キャストが確定申告をする際に、お店から受け取った報酬額と税務署が把握している情報に食い違いが生じ、キャスト側も困惑する可能性があります。 お店側が源泉徴収を怠った場合でも、キャスト自身が確定申告で所得税を精算することになります。
源泉徴収した税金はいつ、どうやって納めるの?
源泉徴収した税金は、報酬を支払った月の翌月10日までに、税務署に納付書を提出して納付します。例えば、5月にキャストに支払った報酬から源泉徴収した税金は、6月10日までに納める必要があります(10日が土日祝日の場合は、その翌平日が期限です)[4]。
納付の手順
税額の計算
毎月の報酬から、前述の計算式で源泉徴収税額を計算します。
納付書の作成
「報酬・料金等の所得税徴収高計算書(納付書)」という納付書を作成します。納付書は税務署などで入手できます。
納付
作成した納付書と税金を、以下のいずれかの方法で納付します。
- 金融機関(銀行、信用金庫など)の窓口
- 所轄の税務署の窓口
- e-Tax(所得税徴収高計算書データを送信し、キャッシュレス納付)
納期の特例はホステス報酬には使えません
給与の支給人員が常時10人未満の事業者は、申請して承認を受ければ、給与などから源泉徴収した所得税を年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめて納める「納期の特例」を利用できます[4]。 ただし、ホステス等に支払う報酬・料金は、この特例の対象外です。国税庁も、支払者が納期の特例の承認を受けている場合であっても、ホステス等への報酬・料金は特例の対象にならないと案内しています[2]。
従業員の給与分を半年ごとに納めている店舗でも、キャストへの報酬分は毎月の納付が必要です。給与の納付と混同して半年分まとめて納めると、期限後の納付となり、延滞税や不納付加算税の対象になるおそれがあります。 詳細はお近くの税務署や税理士にご確認ください。
キャストへの「支払調書」の発行は必要?
はい。同じキャストへの1年間の支払額が50万円を超える場合は、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出する必要があります。支払調書は、お店が支払内容を税務署に報告する書類です。キャストが自分の収入と源泉徴収された税額を確認するときの参考にもなりますが、確定申告に必須の書類というわけではありません。
支払調書は、原則としてその年に支払いが確定した報酬について、翌年の1月31日までに税務署に提出します[5]。キャストから求められた場合などに支払調書の写しを渡すことがありますが、その写しにはマイナンバーを記載できません[5]。 ホステス等の報酬は、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるものが提出の対象です[5]。
50万円以下の支払いは提出の対象外ですが、キャスト本人は確定申告で収入を申告します。
支払調書を作成する際には、キャストのマイナンバー(個人番号)が必要になります。 支払調書には、キャストのマイナンバーを記載する必要があります[5]。取得したマイナンバーは、法令に従って厳重に管理してください。
よくある質問
Q1: 衣装代や深夜帰宅のタクシー代も源泉徴収の対象になりますか?
A1: 対象になることがあります。国税庁(No.2807)は、報奨金や衣装代、深夜帰宅するためのタクシー代を、源泉徴収の対象となる報酬・料金に含まれるものとして示しています。「実費として別に渡している」という理由だけでは対象外になりません。お店が衣装代を負担する場合でも、その事業所でしか使えないデザイン・色調のものなどは、強いて課税しなくてよいとされています(国税庁の質疑応答事例)。交通費全般の扱いは支払方法によって異なる場合があるため、税務署や税理士にご確認ください。
Q2: 日払いのキャストにも源泉徴収は必要ですか?
A2: はい、日払いのキャストであっても源泉徴収は必要です。控除額は「5,000円 × 計算期間の日数」なので、その日の分だけを計算して支払う日払いなら、1回あたりの控除額は5,000円です。つまり日給5,000円以下なら源泉徴収税額は0円ですが、それを超える分には源泉徴収が必要です。月払いの感覚で「10万円くらいまでは引かなくていい」と考えると徴収漏れになります。日払いの実際の取扱いは、税務署か税理士にご確認ください。
Q3: キャストが個人事業主登録していなくても源泉徴収は必要ですか?
A3: はい、必要です。源泉徴収は、報酬を支払うお店側の義務であり、キャストが個人事業主として税務署に登録しているかどうかは関係ありません。報酬の種類が源泉徴収の対象となるものであれば、必ず源泉徴収を行う必要があります。
Q4: 源泉徴収票と支払調書は同じものですか?
A4: 厳密には異なります。「源泉徴収票」は主に給与所得者(会社員など)に対して発行されるもので、給与や賞与、源泉徴収税額などが記載されます。一方、「支払調書」は、報酬や料金、不動産の賃料など、給与以外の支払いに対して発行されるものです。ホステス・キャストへの報酬の場合は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」が該当します。
Q5: 源泉徴収した税金を納め忘れたらどうなりますか?
A5: 源泉徴収した税金を期限までに納め忘れると、税務署から「不納付加算税」と「延滞税」というペナルティが課されます。不納付加算税は原則として納付すべき税額の10%(調査を受ける前に自主的に納付した場合は5%、一定の要件で法定納期限から1か月以内に納付した場合は課されません)、延滞税は納付が遅れた日数に応じて計算されます。これらのペナルティは経営者であるお店側が負担することになりますので、納付期限は厳守しましょう。
参考・出典
- [1]国税庁 | No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは(参照: 2026年10月21日)
- [2]国税庁 | No.2807 ホステス等に支払う報酬・料金(参照: 2026年10月21日)
- [3]国税庁 | No.9205 延滞税について(参照: 2026年10月21日)
- [4]国税庁 | No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例(参照: 2026年10月21日)
- [5]国税庁 | No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等(参照: 2026年10月21日)