「バースデーに花火つきのケーキを出したい。でも消防署に何を聞けばいいのか分からない」
「周年でクラッカーを配りたい。紙吹雪で火災報知器が鳴ったら怖い」
「ガールズバーで、誕生日のお客さんの席で一緒に歌っている。これって大丈夫?」
「周年に大きなお金をかけたのに、元が取れたのか自分でも分からない」
「イベント日の売上は良かった。なのに、あの指名のお客さんはその後来ていない」
「花火やクラッカーは市販品だから法律は関係ない」と思っていませんか。 そして「売上が上がったからイベントは成功」と。 実はどちらも、あとから痛い目を見やすい思い込みです。 演出にはやっていいかの確認が要り、やったあとには元が取れたかの測定が要ります。 片方でも欠けると、来年の判断材料が何も残りません。
風営法 — 席に付いて盛り上げる演出は接待か
バースデーの定番、シャンパンコール。お客さんの席で声を合わせて盛り上げる演出です。 ここで効いてくるのが、風営法の「接待」の定義です。
この法律において「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。
特定のお客さんの席に付いて、歌や掛け声で盛り上げる行為は、この定義に当たりえます[1]。 分かれ目は、お店が接待をしてよい許可を持っているかどうかです。
キャバクラやホストクラブのように許可を受けている店は、許可の範囲で接待ができます。 許可のないバーやガールズバーは違います。誕生日だからといって、席に付いて一緒に歌って盛り上げれば、無許可の接待になるおそれがあります。 「お祝いだから特別」という例外は条文にありません。
許可店にも守る線があります。18歳未満の人を客として入れることは禁止されています[1]。 周年イベントで「友だちや家族も連れてきて」と呼びかけると、ここに触れやすくなります。 営業時間にも上限があり、原則として午前0時から日の出までは営業できません(地域によっては午前1時まで)[1]。 盛り上がったからと延長するのは危険です。
パーティーポッパーは店内で使っていい?
一律に「全部ダメ」とは言えません。ただし、火を使うもの・火花が出るものは話が別で、市区町村の火災予防条例と管轄の消防署の判断に左右されます。
では、紙テープや紙吹雪が出るだけの小型のポッパーなら安全でしょうか。 中身が紙だけでも、天井の火災報知器や、スプリンクラーの近くで使えば誤作動の原因になります。 粉や煙が感知器に反応するからです。火が出ないから安心、とは言い切れません。
「そんな細かいことまで確認するのは面倒だ」と感じるかもしれません。 確認は消防署への電話1本で済みます。 使う予定の商品名と、店の広さ、使う場所を伝えれば、その店の条件での答えが返ってきます。 誤作動で全館に警報が鳴ってから、ほかのテナントに頭を下げるより、ずっと安く済みます。
消防法と火薬類取締法 — 火と火花のルール
店内で「火」をどう使うかは、消防法が土台を決めています。 細かい中身は、各市区町村の条例に任されています。
かまど、風呂場その他火を使用する設備又はその使用に際し火災の発生のおそれのある設備の位置、構造及び管理、こんろ、こたつその他火を使用する器具又はその使用に際し火災の発生のおそれのある器具の取扱いその他火の使用に関し火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例でこれを定める。
つまり、同じスパークラー(手持ち花火)でも、A市では届出が必要、B市では屋内使用が不可、ということがありえます[2]。 ネットの体験談は、自分の店の市区町村では通用しません。
装飾にも注意が要ります。消防法には、カーテンや暗幕、じゅうたんなどに燃え広がりにくい性質(防炎)を求める決まりがあります[2]。 周年で天井いっぱいに布の飾りを張る場合、その布が防炎のものかどうかを確かめてください。
もう一つが火薬類取締法です。花火やクラッカーの中身である火薬は、この法律の対象です。 火薬類を爆発させたり燃やしたりする「消費」には、原則として都道府県知事の許可が必要とされています[3]。 家庭向けに売られている小型の玩具は別の扱いです。 けれど、どこまでが小型かを素人が見分けるのは危うい。本格的な打ち上げや大きな火花を屋内でやる話なら、そもそも店の演出の範囲を超えています。
演出ごとの法令チェックリスト
やる前に、次の表で「誰に何を確認するか」を埋めてください。
| 演出 | 確認先 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 席でのシャンパンコール | 自店の許可の種類(警察署) | 許可のない店では接待になりうる |
| 花火つきケーキ・スパークラー | 消防署・ビル管理会社 | 屋内の火気使用は条例で制限や届出がある |
| ポッパー・クラッカー | 消防署・ビル管理会社 | 火花が出る種類は別扱い。紙吹雪も感知器に反応しうる |
| 布・バルーンなどの装飾 | 消防署 | 防炎の表示があるか。通路や出口をふさがない |
| 友人・家族の来店呼びかけ | 自店の許可の種類(警察署) | 許可店は18歳未満を客として入れられない |
| 周年の延長営業 | 警察署 | 営業できる時間には上限がある |
確認を「自分の店」だけで終わらせてしまうことです。火災報知器の設備は、ビル全体でつながっていることが多くあります。 自店で出した煙や粉でも、鳴るのは全館です。 管理会社と設備の保守業者に、イベントの日時と演出内容を前もって伝えておくこと。 当日の朝に伝えても、感知器を一時的に止める手配は間に合いません。
費用対効果の測り方 — 3つの数字
法令の確認が終わったら、次は「元が取れたか」です。 見る数字は3つで足ります。
| 見る数字 | 比べる相手 | 分かること |
|---|---|---|
| イベント日の売上 | 直近4週の同じ曜日の平均 | 演出で上乗せされた売上 |
| 来店人数 | 同じ条件の通常日 | 集客が増えたのか、単価が上がったのか |
| 指名客の再来店率 | イベント前の同じ指名客の来店間隔 | 一度きりの盛り上がりか、次につながったか |
ポイントは、比べる相手を同じ曜日の通常日にすることです。 金曜のイベント日を、水曜の売上と比べても意味がありません。
計算式は単純です。
上乗せ売上 = イベント日の売上 − 通常日の平均売上
演出の元が取れたか = 上乗せ売上 > 演出にかけた費用
ここで引っかかるのが3つ目です。当日の売上は、その日のレジを見れば分かります。 再来店は、お客さん一人ひとりの履歴を見ないと分かりません。
測定の手順 — 4ステップ
演出の費用をすべて書き出す
演出の材料費だけでなく、告知の費用、スタッフの追加人件費、準備にかかった時間も入れます。入れ忘れると、効果が大きく見えます。
比べる通常日を決める
イベント前の同じ曜日4回分を基準にします。決めるのはイベントの前です。結果を見てから選ぶと、都合のいい日を選びたくなります。
当日の3つの数字を記録する
売上、来店人数、そしてイベントに来た指名客の名前(または管理番号)。3つ目を残し忘れると、あとから取り戻せません。
一定期間後に再来店を数える
たとえば30日後など、期間を先に決めておきます。再来店率 = 期間内にまた来店した指名客の数 ÷ イベントに来た指名客の数で出します。期間は、自店の指名客が普段どれくらいの間隔で来るかに合わせてください。
再来店率を出すには顧客データが要る
「測定なんて、うちみたいな小さい店には大げさだ」と思うかもしれません。 けれど必要なのは、大げさな分析ではありません。お客さんごとに、来店した日が残っていることだけです。
これが意外と難しい。伝票は日ごとに綴じられ、指名の記録は担当の頭の中、連絡先は個人のスマホ。 この状態では、イベントに来た指名客が30日後に戻ったかどうかを、数えようがありません。
来店履歴が客ごとに1か所へ集まっていれば、再来店率は集計で出ます。 来店履歴だけでなく、誕生日や前回の来店日も同じ場所に入っていれば、バースデーイベントの案内を送る相手まで絞れます。 演出にかけるお金を決める前に、記録の置き場所を整える。順番としては、そちらが先です。
冒頭の「売上は良かったのに、あの指名客は戻ってこない」は、当日の数字しか見ていないから起きます。 次のイベントで、再来店率という数字を1つ手元に残してください。
よくある質問
Q1. バースデーのシャンパンコールは接待にあたりますか?
特定のお客さんの席に付いて盛り上げる行為は、接待に当たりえます[1]。 接待の許可を受けているキャバクラ・ホストクラブなどは、許可の範囲で行えます。 許可のないバーやガールズバーは注意が必要です。判断に迷うときは、営業所を管轄する警察署に確認してください。
Q2. 花火つきのケーキは店内で出せますか?
火を使う演出は、市区町村の火災予防条例に左右されます[2]。 届出が必要な地域や、屋内の使用そのものを制限している地域もあります。 購入する前に、管轄の消防署とビルの管理会社の両方に確認してください。
Q3. 指名客の再来店率はどうやって出しますか?
イベントに来た指名客のうち、決めた期間内にもう一度来店した人数を、イベントに来た指名客の人数で割ります。 期間は先に決めておきます。出すには、お客さんごとの来店日が記録されている必要があります。
Q4. 小さな店でも消防署に確認する必要がありますか?
火の使用に関する条例は、店の大きさにかかわらず適用されます[2]。 防火管理者の選任など、規模によって変わる決まりもあります。 どれが自分の店に当てはまるのかは、消防署に聞くのが確実です。
Q5. 周年イベントの効果は、何日後まで見ればいいですか?
自店の指名客が普段どれくらいの間隔で来るかに合わせます。 週1回来るお客さんが多い店と、月1回の店では、見る期間が違います。 大事なのは、イベントの前に期間を決めておくことです。結果を見てから決めると、数字を都合よく読んでしまいます。